飲料水や食品のパッケージには様々な数字、文言が出てきます。
レモン○個分のビタミンCが入っているとか、果汁100%のオレンジジュース、1日分の栄養素が入っている、濃縮還元のジュースであるなど色々な表現が飛び出します。
近年では糖質制限をしている人にも利用してもらうべく、糖質ゼロの食品などが登場し、そのような表記がなされています。
一方、糖「類」ゼロという飲料や食品も出ており、果たして糖質ゼロと糖類ゼロでどのように違うのか疑問に感じる消費者も少なくありません。
カルシウムたっぷり、カロリーオフ、カロリーゼロなどカロリーに関する表現や栄養分に関する表記も多くなっており、こうした表記の種類は年々増えています。
この記事の目次
これらの表記は本当に正しいのか
表記にルールはあるのか
例えば、果汁に関する表現があったとします。炭酸飲料などには果汁1%など果汁を含んだものが並び、そこに果物の絵が描かれていることがありますが、果汁が10%未満のものに関してはリアルな果物を表示することはできないというルールがあります。
これは景品表示法、公正競争規約で定められており、このルールの中、表記も行われており、これを違反すると法律違反に問われることからそのルール内での表示が行われています。
ジュースに関しても実は果汁100%のものしかジュースと表記することができません。これは食品表示法のルールで決められており、50%だろうが10%だろうがそうしたものはジュースではなく、これだけの果汁が入った飲料ということになります。
濃縮還元という表記
ジュースの中には「濃縮還元」という表記があります。いかにもジュースのクオリティが高いことを謳っているように見せるデザインで書かれている場合もありますが、全くそんなことはありません。
これは海外の工場などでいったん果汁を絞り、その場で水分を飛ばし、タンカーで運んでから再び水分を加えるという製法を行ったものであるという表記になっています。
何故そのようなことをするのかというと水分を飛ばしたほうがタンカーで運ぶ際に、コストが削減できるから行っているもので、味のクオリティが高い訳ではありません。
こうした表記がない場合には、その場で作った生絞りジュースや、ストレート果汁と呼ばれるものを使ったものなどです。
糖類・糖質の表記の違いとは
糖類と糖質の違いですが、糖類は糖質の一部というのが真実であり、糖類がゼロだったとしても別の要素で糖質が含まれているケースがあります。そのため、糖類がゼロだから糖質もゼロということにはなりません。
ただ、糖質ゼロと書いてある商品だからといって、全く入っていないのかといわれると実はわずかに入っていることがあります。
一見すると食品表示法に違反するように思われますが、健康増進法に基づく栄養表示基準で、100ミリリットルあたり0.5ミリグラム未満ならゼロ表示が可能なのです。
レモン1個当たりのビタミンC
レモン1個当たりのビタミンCの表記に関してもルールはあり、レモン1個分につきビタミンC20ミリグラム換算というものが決まっています。
つまり、レモン○個分と書かれている場合には、その個数に20ミリグラムを掛け算したものがビタミンCの含有量です。ほうれん草○個分の鉄分なども同様となっています。ビタミンCといえばこの食品、鉄分といえばこの食品と決まっているのです。
例えば、炭酸飲料の中にはレモン系のものがあります。そうした飲料にはレモン50個分などのことが表記されていることがほとんどです。
ビタミンCを多く含む商品のほとんどがこうした表記になっており、むしろそれ以外の表記をしている商品を探すのが難しいほど徹底されています。
様々な表記に隠されている企業の狙い
ナトリウムを食塩の相当量で表示することや、特定の栄養素がたっぷり入っているという表記の際における数値の変更、無添加を強調する表示なども定期的にルールが変わっており、消費者にわかりやすい形にしています。
そのルールをかいくぐる企業が出ればその対策が行われるなど、いたちごっこのようになっているのがその実態です。
企業の思惑として考えられるのは消費者に対するアピールのしやすさです。例えば「この商品はビタミンCが1000ミリグラムも入っています」とアピールしても、消費者にはその数字が何を意味するのかがさっぱりわかりません。
ビタミンCが多く入っているとしか認識できず、よくもわからないまま商品を購入することになってしまいます。レモンの個数で表記すれば、これだけ多くのものが入っているのかというのがわかりやすいというのが企業の狙いです。
亜鉛のサプリメントならば1粒で牡蠣10個分と表記すれば非常にわかりやすく、青魚などに入っているDHAも、1粒で刺身何切れ分と書かれていればイメージがしやすくなります。
これらは決して嘘ではなく、明確な基準の中で算出されてはじき出された数字だといえるでしょう。
そこに隠された企業の狙い
ただ企業の狙いは他にもあり、楽して健康になりたいという消費者の心理を突くということです。
炭酸飲料の印象は、砂糖がたくさん入って肥満の原因になるという要素が強く、そんなものを飲んだら健康を害するというイメージが多くの人にあります。
しかし、これを飲めばビタミンCが補給できるとなれば、あくまでビタミンCを補給するために飲むということが言えるため、健康を害するどころか健康の助けになるという印象をつけることが可能です。
ビールなどもこれにより、印象を上げることができるようになっています。ノンアルコールビールにしじみなどに多く含まれるオルニチンをいれ、休肝日に最適という売り方をすることにより、健康的に楽しむという戦略が可能になりました。
今までは酔っ払い、肝臓を悪くするなどネガティブな印象をもたれていましたが、適量なら健康的になり、むしろおすすめという感じになれば、ビールなども非常に売りやすくなります。
こうしたことからもわかるように、企業としては消費者の健康を真に願ってそうした表記をしているのではなく、単に商品の印象を良くすることしか考えていないのが実情です。
これが行き過ぎると消費者を欺くことになります。最近のケースでは、厳選果実と書いていながら無果汁と表記されており、果たして真実はどうなっているのかと騒ぎになることも出てきています。
特に最近はフレーバーのついたミネラルウォーターがかなり多く出ており、様々な味のついたものが登場しています。果汁は入っていないがエキスは入っているなど、一見するとどういうことなのかよくわからないような状態になっているものも珍しくはありません。
今現在は厳しく制限はなされていませんが、混乱する消費者は今でも多いことからいずれ規制の対象となることも考えられます。
まとめ
飲料や食品の表記に関する歴史は古く、不当表示をいかに避けながらすごい商品として売るかが求められています。
果物の断面を使っているものは果汁がたくさん入っているというのは多くの人が認識していることを逆手に取り、乳製品や野菜ジュースなどでこうした断面を使うことがあり、この場合は使用が認められるなど本当にわかりにくい状況です。
食品や飲料の表記に関するルールがこれだけバラバラで、しかもわかりにくいものであることから、企業もそのあたりの抜け穴を探しているのが実態と言えるでしょう。
果汁100%などあからさまに違いがわかるものに関しては疑う必要はないものの、豊富な栄養素を含んでいる健康食品、健康飲料を買うときなどはなぜそのような表記になるのかを確認しながら調べてみることをおすすめします。
もちろん、あからさまに嘘をつくことを企業はしませんが、消費者側が誤認しても仕方のないような表記をすることはよくあるため、まずは疑ってかかることです。
誤認しないためにも、ある程度は自分で見極められることが大切なのではないでしょうか。