細菌やウイルスなどの病原体が体に入ると、体内では抗体が作られ、病原体を退治しようとする免疫という機能が働きます。ところが、花粉や金属や食物などの有害ではない物質に対し、免疫機能が過剰に働いてしまい、体に何らかの異変が起こる場合があり、これをアレルギーと呼びます。
アレルギーを引き起こす食物の種類は多く、死亡例もあり軽視できません。食物アレルギーについての知識を深め、健康な食生活に役立てましょう。
この記事の目次
食物アレルギーの種類
アレルゲンと食物アレルギーの型
【アレルゲン】アレルギーの原因となり得る抗原(免疫機能を起こさせる物質)と抗体(抗原を認識し追い出すために体内で作られる対抗物質)のことで、鶏卵や小麦などの食物性、花粉やダニなどの吸収性、金属やゴムなどの接触性のものがあります。広い意味では「アレルギーを起こす原因となるもの」とされます。
【即時型アレルギー】食物摂取後、数分から1時間程度でアレルギー症状が出る型。じんましん、鼻水や咳、下痢や嘔吐などの症状が出る場合が多く、呼吸困難や失神などの重い症状を引き起こすアナフィラキシーショックはこの型に分類されます。
【アナフィラキシーショック】年間数十名の死亡者を出しており、主な原因となっているのは蜂の毒と薬物です。食物アレルギーが原因の死亡者も毎年数名出ています。短時間で激しい症状が出ることが特徴で、症状は「皮膚・粘膜・循環器」に現れます。特に呼吸困難などの呼吸器系の症状が出た場合や、激しい腹痛や嘔吐、血圧の低下、失禁や失神などの症状が出た場合はすぐに処置が必要となります。そばや落花生(ピーナッツ)に発症数が多いというイメージがありますが、アレルギー症状が軽症のものを含めると、鶏卵が最多となります。甲殻類や小麦など、その他の食物でも発症する場合があります。
【遅延型アレルギー】食物摂取後数時間(長い場合は48時間程度)でアレルギー症状が出る型。下痢や便秘、体重の減少、アトピー性皮膚炎の悪化などの症状が多く出ますが、症状は多岐に渡ります。発症までに時間が掛かることから、食物が原因であると気付かない場合も多くあります。
食物アレルギーの種類
厚生労働省では「アレルギー発症件数が多い卵・乳・小麦・エビ・カニの5品目」と「アレルギーが出た場合症状が重いそば、落花生の2品目」の計7品目を使用している食品には、パッケージにアレルゲン表示することを義務付けています。
鶏卵アレルギー
大人よりも乳幼児に多く、最も発症件数が多いアレルゲンです。卵黄よりも卵白に含まれるタンパク質にアレルゲンが多く含まれています。鶏卵のアレルゲンは加熱によって弱まります。鶏肉・イクラやタラコなどの魚卵は、鶏卵アレルギーには含まれません。
【注意すべき食品】パン・麺類・練り製品(ちくわやはんぺんなど)・プリン・ババロア・マヨネーズなど
牛乳アレルギー
大人よりも乳幼児に多く、加熱によってアレルゲンは弱まりません。牛乳成分が使われている加工食品は、含有量に注意が必要です。ミルクアレルギーの乳幼児が代用するものとしては、タンパク質を加水分解し、アレルゲン性を低下させたアレルギー用ミルクなどがあります。
【注意すべき食品】コーヒー牛乳・生クリーム・チーズ・ヨーグルト・グラタン・シチュー・ハム・プリン・クッキー・ビスケットなど
※豆乳、乳化剤、乳酸には牛乳は含まれていません。
小麦アレルギー
小麦は卵・牛乳に次いで発症件数が多いアレルゲンです。小学生までの子供に発症しやすく、加熱によってアレルゲンは弱まりません。味噌や醤油など含まれている小麦は、長期間の発酵によりアレルゲンとなるタンパク質がほとんど分解されるため、アレルゲン性がほとんどない食品です。
【注意すべき食品】パン・麺類・餃子やシューマイの皮・天ぷらの衣・カレーやシチューなどのルウ・ビールやウイスキー・ケーキ・クッキー・ビスケットなど
エビ・カニ(甲殻類)アレルギー
エビやカニ、シャコなどの甲殻類がアレルゲンで、エビは特に強いアレルギー反応が出ることが多く、成人では最も多い食物アレルギーです。エビやカニを使ったスープや味噌汁でもアレルギー反応が出ます。
【注意すべき食品】エビやカニが含まれているソーセージやかまぼこなどの食品・干しエビを利用しためんつゆや調味料など
そばアレルギー・落花生(ピーナッツ)アレルギー
そばと落花生(ピーナッツ)はアナフィラキシーショックを起こすアレルゲンとして注意が必要です。そばは茹で汁や蒸気にも反応する場合があり、落花生(ピーナッツ)はピーナッツオイル、スナック菓子やカレーのルウなどの隠し味に使用されている場合があるため、注意が必要です。
上記の7品目以外にも「大豆」「牛肉、鶏肉、豚肉などの肉類」「鮭、鯖などの魚類」「牡蠣、アワビなどの貝類」「イクラ、タラコなどの魚卵類」「イカなどの軟体類」「オレンジ、キウイフルーツ、リンゴ、バナナ、桃などの果物類」「やまいも、じゃがいも、トマトなどの野菜類」「くるみなどの木の実類」「まつたけなどのキノコ類」「ゼラチン」などがアレルギーを引き起こす原因となる食物として挙げられます。
食物アレルギーから身を守る方法
食物アレルギーの原因となる食物の種類が、こんなに多くあることには驚いてしまいますが、厄介なことに、食物アレルギーはいつ何時発症するか分からないのです。今までは平気で食べていた食物が、突然食物アレルギーを引き起こす可能性があるのです。さらに、大人は一度食物アレルギーを発症すると治ることは無く、原因となるアレルゲンを避けるしか方法は無いと言われています。
それでは一体どのようにして食物アレルギーから身をまもればよいのでしょうか?
アレルギー反応の症状を見落とさない
自分にとって食物アレルギーのある食べ物を摂取すると、体に何らかの異変が起きますが、その異変を見落としている場合があります。例えば「少し口の中に違和感がある」「喉がイガイガする感じがある」など、症状が軽い場合です。免疫が低下している時などにその食物を摂取し、重い症状が出てから自分が持っている食物アレルギーに気付くケースが多いのです。
アレルギー反応が出ていることに気付かず、食物アレルギーのある食べ物を日々食べ続けているかもしれないなんて怖いですよね?まずは「これを食べるといつも○○が起こる」「これを食べるといつも○○な感じがする」という食物は、もしかしたら自分にとってのアレルゲンなのではないか?と疑うことが大切です。
食物アレルギーの症状
皮膚:じんましん・かゆみ・赤み・湿疹など
粘膜:唇の腫れ・まぶたの腫れ・口や喉のイガイガ感など
呼吸器:咳・くしゃみ・呼吸の乱れ(ヒューヒュー音やゼーゼー音など)など
消化器:嘔吐・下痢・腹痛・吐き気など
呼吸器の症状が出た場合や、各症状が重い場合は注意が必要です!
病院での問診とアレルギー検査
食物アレルギーが発症して病院にかかる場合は「何を食べたのか」「どのくらい食べたのか」「どんな症状が出たのか」「症状が出るまでにかかった時間」を答えられるようにしておきましょう。これにより、医師が原因となるアレルゲンを推測しやすくなります。
自分が何の食物アレルギーを持っているのか検査を行うこともできます。病院では、血液中に含まれるIgE抗体(アレルギー反応を起こす抗体で、健康な人には微量しか検出されない)の量を調べる「血液検査」や、生後3~6か月ごろの赤ちゃんに用いられる「皮膚テスト」があります。また、陽性となった食物の量を少しずつ増やしながら食べ、その経過を観察し、原因食物の除去を最小限とすることを目的とした「食物経口負荷試験」もあります。食物アレルギー検査を自宅で行える「検査キット」なども市販されています。
まとめ
食事中のちょっとした違和感や、食後のちょっとした体調不良は、もしかしたら食物アレルギーが原因かもしれません。原因がわからないまま食物アレルゲンを体内に溜め続け、ふとしたタイミングで重い症状が出てしまい、取り返しのつかないことになる危険性があります。
食物アレルゲンを体内に蓄積させないためには、自分には何の食物アレルギーがあるのかを知り、適切な摂取量を知ることが大切です。また、食物アレルギーのある食物の摂取量を抑えると、栄養バランスが崩れることもあります。足りない栄養素はアレルギーのない食物から代用して摂取するように、食事のメニューを考えることも重要だと思いました。