私達人間は、感動したり恐怖を覚えた時などに、自分の意志とは無関係に鳥肌が立つことがあります。プツプツと体毛や皮膚が逆立ち、まるで羽を取った後の鳥の肌によく似た状態になります。
寒い時にも起こるため、関西地方では「寒い時に出るイボ」という意味からサブイボと呼ばれることもあります。
そもそもどうしてそのような現象が起きるのか、その仕組みについて不思議に思ったことがある人も少なくないでしょう。その現象が起こる状況によって、理由も様々なのです。
この記事の目次
鳥肌が立つ仕組みと場面
鳥肌は冬の寒い日や、急に冷たい風を浴びた時などによく起こります。鳥肌は全く無意識に生じる現象で、立てようと思って立てられるものではありません。同様に、一度立ってしまった鳥肌は意識的に抑えることは非常に困難です。
寒いときの鳥肌の理由と仕組み
寒いときに鳥肌が立つのは、主に体温調節のためです。私達の身体には体毛が生えており、その根本には立毛筋という筋肉がついているのですが、立毛筋は脳の交感神経とリンクしているのです。
交感神経は緊張したり、興奮状態、ストレスを感じたときに活発化する特徴を持っています。つまり、寒さを感じた時には脳が緊張状態になり、反射的に立毛筋が逆立ち、一つ一つの毛穴も収縮して周囲の皮膚も盛り上がってしまうのです。
これは人間に限らず、哺乳類全般に見られる現象で、毛穴を閉じることで体の外に熱が逃げてしまうのを防ぐための生理現象なのです。
鳥や小動物などは、寒い季節の頃には体毛を膨らませて空気の層を作り、そこに熱を蓄えることによって寒さから観を守れるようになっているのです。
ちなみに顔には鳥肌が立たないと思っている人もいますが、それは顔面の立毛筋が他の部分に比べて発達していないので一見そう見えるだけで、実は顔にも鳥肌はちゃんと立っているのです。
怖いときの鳥肌の理由と仕組み
怖いときにも鳥肌が立つことがあります。よく恐ろしい経験をしたときに「身の毛もよだつ」「総毛立つ(そうけだつ)」といった表現を使うことがありますが、これがそれにあたります。
恐怖感や嫌悪感を感じたときに全身の体毛が逆立つのは動物にもよく見られる現象で、敵に対して威嚇し、少しでも体を大きく見せようとする本能によるものだと言われています。
人間の場合は元々が猿だったことの名残から、恐怖を感じた時に毛が逆立ってしまうのです。
寒いときに起こる鳥肌も、怖いときに起こる鳥肌も基本的には交感神経が刺激されて起こるもので、メカニズムは同じものなのです。
感情からくる鳥肌の理由と仕組み
素晴らしい映画を観たり、音楽を聴いたり、美しい光景を目にした時など、感動したとき体中の毛が逆立つことがあります。
これは簡単に言うと、脳が極度に興奮状態になった場合、交感神経が刺激されて脳が寒いと勘違いし、立毛筋を逆立ててしまうことによるものだと言われています。
その為、身体は全く寒さを感じていないのにゾクゾクっと身体が震え上がるような現象が起こるのです。
焦ったり緊張したりするときに鳥肌が立つ方も少なくありません。また、非常に高い音というのは強い不快感を与えることがあるため、金属音や黒板を引っ掻いた時などの高い音を耳にしたときに鳥肌が立つという方も多いでしょう。
このように、寒さや恐怖心以外の場面で鳥肌が立つのは、大脳が発達した人間にのみ起こる現象だと言われており、本来は全く非合理的なものだとされており、機能的にもあまり意味がありません。
しかし、思わず鳥肌が立つほどの強い刺激を脳に与えてしまう感動を得られたというのは、人生経験において非常に有益なものと言えるでしょう。
病気が原因で鳥肌が立つ?
鳥肌が起こる理由は大きく分けて、寒さを感じた時の体温調節、恐怖心や不快感を感じた時の威嚇本能、感動した時の身震いなどが挙げられます。
しかし、これら以外のときに鳥肌や身震いを感じた場合には、何らかの病気のサインである可能性もありますので、気をつけておく必要があります。
自律神経の乱れ
例えば、自律神経が乱れると全く寒さを感じていないのに勝手に鳥肌が立ってしまうことがあります。その場合、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまい、鳥肌以外にもめまいやほてり、動悸や耳鳴りなどの諸症状があらわれてきます。
自律神経が乱れる原因には食生活や生活スタイルの乱れ、ストレスや睡眠不足、加齢など、色々なものがあります。自律神経を整えるためには、生活スタイルを整え、しっかりと睡眠をとるように心掛けることが大切です。
体を休ませるだけでなく、心をリラックスさせることも大切ですので、入浴やアロマテラピーなども効果的です。
アトピー
アトピーが原因となって鳥肌が立ってしまうことがあります。アトピーは肌にかゆみや湿疹などの症状が現れることが殆どです。アレルギー体質の人に起こりやすく、改善するためには内服薬や、塗り薬などの使用が必要になってきます。
アトピーは、肌のバリア機能が低下している状態ですので、痒いからといって掻いたりするとかえって症状を悪化させてしまいます。アレルギーの原因になっている物質を出来るだけ遠ざけることも大切です。
皮膚科や内科、アレルギー科などで検査を受けることも出来ますので、自分がどの物質にアレルギー症状を引き起こしてしまうのか、あらかじめ調べておくことをお勧めします。
扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)
扁平疣贅という病気も鳥肌状の肌になる原因の一つです。引っかき傷などから細菌が入り込み、鳥肌状の黒く乾燥した症状があらわれます。
これはアトピー症状とは全く異なり、イボ状になった部分を除去する治療を受けなければなりません。
寒冷蕁麻疹
また、寒冷蕁麻疹が原因になって鳥肌が起きてしまう場合もあります。
寒冷蕁麻疹というのは通常時の蕁麻疹とは違い、自分の体温よりも冷たい物質に触れたり、極端に身体が冷やされた時などに発疹や鳥肌、かゆみなどの症状があらわれるものです。
一見鳥肌のように見えても赤いぶつぶつのようなものがあらわれていたり、腫れなどの症状が現れている場合には、こういったものが原因になっている場合もありますので、出来るだけ皮膚を刺激しないように注意し、皮膚科などで診てもらうようにしましょう。
おかしいと思ったら病院へ
他にも様々なものが原因となり、鳥肌、もしくは鳥肌に似た症状を引き起こしてしまうことがあります。
寒さや恐怖心などを感じていないのに鳥肌を感じた時には、身体からの病気のサインの可能性もあるということを念頭に置いておくようにしましょう。
たかが鳥肌と思わず、症状が長引いている時や、あまりにも違和感を感じる場合には早めにかかりつけの医者に相談してみることをおすすめします。
まとめ
人間が鳥肌を立てる意味はあまりなく、進化する前の動物の名残りによるところが大きいかもしれません。
また、人間が感動したときに鳥肌が立つメカニズムなどは、まだまだ研究中のものが多く、分かっていない部分も多いのです。
そもそも感動したときに「鳥肌が立つ」という表現自体が誤用だとも言われており、感動して鳥肌が立ったという表現に対して違和感を感じる方も少なからずいます。
本来は悪寒や恐怖心を表現する際に使用するマイナスの意味を表す言葉ですので、プラスの意味で使用する時には注意するようにしましょう。